研究概要 |
生体系には二核鉄中心により酸素分子を二電子還元し,生成したペルオキソ基及びペルオキソ基をさらに活性化し,トルエンを水酸化するtoluene/o-xylene monooxygenase (ToMO)やメタンを水酸化するmethane monooxygenaseなどがある。本研究では,これら二つの異なる機能を有するペルオキソニ核鉄(III)錯体の合成を試みた。平成18年度,フェニル基を組込んだアルコキソ架橋基を持つ二核化配位子L^<Ph4>(L^<Ph4>=N,N,N^1,N^1-tetrakis[(1-methyl-2-phenyl-4-imidazolyl)-methyl]-1,3-diamino-2-propanolate)の二核鉄(III)ペルオキソ錯体[Fe_2(L^<Ph4>)(Ph_3CCO_2)(O_2)]^<2+>はフェニル基の一つを位置選択的に水酸化することを見出している。平成19年度では,methane monooxygenaseの機能モデル錯体の合成を目指し,酸化プローブとしてメチル基を含む6-methyl-2-pyridylmethy基をサイドアームとして持つ二核配位子(L^<Me4>=N,N,N^1,N^1,-tetrakis-[(6-metyl-2-pyridyl)methyl]-1,3-diamino-2-propanolate)の二核鉄(II)([Fe_2(L^<Me4>)(Ph_3CCO_2)(O_2)]^<2+>)を合成し,酸素分子との反応性を調べた。その結集,本錯体も-40℃で二核鉄(III)ペルオキソ錯体([Fe_2(L_<Me4>)(Ph_3CCO_2)-(O_2)]^<2+>)を生成し,さらに-20℃でゆっくりと分解して配位子に組込んだメチル基を約65%の収率で水酸化することを見出し,methane monooxygenaseの機能モデル錯体合成に成功した。
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