研究概要 |
(1)文献調査、実験結果の吟味、基礎データの収集: 実験・理論両面の論文等の調査と、本特定領域研究に参加している他の研究者との議論により、概念的整備をすると共に対象とする多孔性配位高分子の物性全般に関する実験結果や実験データの理解を深めた。特に多孔性配位高分子の典型例として、一次元細孔をもつCPL-1([Cu_2(pzdc)_2pyz]_n、pzdc : pyrazine-2,3-dicarboxylate, pyz : pyrazine)のミクロ物性を評価した。さらに、非平衡統計力学的観点から再考・吟味して、ミクロ理論との対応を探求した。 (2)細孔内自由エネルギー曲面の構築とその電子状態理論からの理解: 多孔性配位高分子が生み出す細孔に吸着した小分子が感じる力場を理論化学的に構築した。具体的には、CPL-1に吸着した酸素分子と窒素分子を例に、傾斜角などの相違点の特定から、CPL-1内細孔の特徴と、細孔内における小分子の存在状態に関するMO的な知見を得た。一方、自由エネルギー面の構築を進め、その特異性を量子化学的な説明を試みた。さらにQM/MM型の分子動力学(MD)計算を実行することにより、小分子の吸着した多孔性配位高分子の熱力学的特性を明らかにしようとした。 (3)分子結晶におけるナノ空間特性に関する研究: 有機金属反応剤であるアルキルリチウムの多様な凝集構造を、ナノ空間内の細孔ポテンシャルを理論的に研究するための理論的試金石とみなし、分子軌道法と密度半関数法により、探求した。その際、体心立方結晶[(MeLi)_4]_∞中のメチル基水素の相対位置を、X線結晶構造データを参考に理論的に求めて比較した。その結果、完全最適化構造はエクリプト型がより安定となり実験結果と矛盾する結果が得られた。現在、その原因を研究中である。
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