研究課題
金属蛋白質や酵素の機能解明の研究が精力的に行われている。特に、化学反応論の立場からの研究では、活性中心を構成する金属イオン周辺のアミノ酸残基の役割の解明が主要な課題となっている。これに対し本研究課題は、「我々が望む反応を触媒する金属酵素や機能を有する金属蛋白質を作成する」によって構造と機能の分子レベルでの理解を検証することを中心課題としている。以下、本年度の成果をまとまる。Pdイオン結合サイトの決定:apo-Fr溶液にそれぞれ100当量、200当量のK_2PdCl_4水溶液を加えた後、ゲル濾過カラムG200で精製して2種のPdイオン/apo-Fr複合体を作成した。これらの複合体をCdイオン存在下で結晶化し、異常分散効果の差を利用したX線結晶構造解析によりPdイオン、Cdイオンの位置決定を行った。100当量、200当量の結晶の分解能は、それぞれ2.1Å、2.5Åであった。結晶構造解析の結果から、Fr内部表面に存在するPdイオン結合可能サイト数が、50当量では1分子当たり144か所であったのに対し、100当量では216か所、200当量では264か所と増加した。また、Pdイオンの増加に伴い、結合に関与しているアミノ酸側鎖のコンフォメーション変化が誘起されることも明らかにした。Pd-Auバイメタル粒子作成:apo-Fr内部へのAu-Pdバイメタル粒子作成として、(a)合金構造を目指し、Fr内部にAuイオンを挿入後、さらにPdイオンを挿入して還元する「共還元」と、(b)コアシェル構造を目指し、Auナノ粒子を内包したFrにPdイオンを挿入、還元する「逐次還元」を行った(スキーム2)。それぞれアポFr溶液に、500倍のKAuCl_4、およびK_2PdCl_4を添加し、NaBH_4を用いて還元した。TEM測定から、apo-Fr内部にそれぞれ2.2±0.2nm、2.4±0.3nmの粒子形成が確認された。さらに、HRTEM、EDS測定から、Frに内包されている粒子は結晶性であり、Au、Pdによりバイメタル化していることが示された。また、それぞれを触媒とした場合の水素化反応性は、コアシェル型Au-Pd粒子内包apo-Frでは、モノメタルのPd粒子内包apo-Frと比較して活性が向上した。一方、合金型では顕著な活性の向上は見られなかった。この違いは、コアシェル型では粒子表面をPd原子が覆っているため、活性サイトが合金型に比べ多いためと考えられる。現在は、EXAFSによる詳細な構造評価を行っており、粒子構造が活性にもたらす影響について調査中である。
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