研究概要 |
本研究では、脂溶性一次元錯体の構造制御と、その表面における分子適応空間の創成を目指した。Fe^<ll>トリアゾール錯体Fe^<ll>(1)_3Cl_2のクロロホルム溶液に、Fellイオンと等モルの長鎖アルコール(C_<12>0H,C_<14>0H)を添加してキャストしたところ、FT-IRスペクトルよりROHとCl^-の間にイオン性水素結合が形成されることを確認した。C_<12>0H、C_<14>0Hをドープしたキャストフィルムにおいては、アルキル鎖間のvan der Waals力とイオン性水素結合(ROH…Cl^-)の両方によって、スピンクロスオーバーに顕著な熱履歴が誘起された。この双安定性の誘起は,スピンクロスオーバー特性を超分子化学的に制御した初めての例である。またさらに、この分子認識空間に液晶JC1041XXを導入した。Fe^<11>(1)_3Cl_2/JC-1041XX複合体は,283Kで紫色のゲル,363Kで無色のゲルを与えた。この変化は可逆的であり、ゲル中においてはFe^<ll<(1)_3Cl_2単独(T_<sc>=283K)よりも高い温度で低スピン(紫)〓高スピン(無色)のスピン転移が可逆的に起こった。これらの結果より、JC-1041XXは、Fe^<11>(1)_3Cl_2と相互作用をし、スピン転移特性を示す液晶ゲルを与えることが明らかとなった。次に、一次元金属錯体のモルフォロジーを光制御する目的で、アゾベンゼン基を導入したFe^<1l>(2)_3(BF4)_2を合成した。この錯体はクロロシクロヘキサン中では黄色のゲルを形成するが、このゲルに紫外光を2-3分照射すると、トランス/シス異性化が速やかに起こり、オレンジ色の溶液となった。AFM観察より、アゾベンゼン基の光異性化に伴い錯体鎖が柔軟な構造に変化していることが確認された。
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