研究概要 |
金属ナノ粒子では、表面積が極めて大きいことから、水素を大量に吸蔵することや水素吸蔵過程のレスポンスが速いことが期待される。また、金属ナノ粒子は、その表面を有機ポリマーでコーティングすることによって、精密にサイズ制御されかつ空気中で安定な系となる。この系に高密度に水素を吸蔵させると、プロトン核の波動関数の重なりが生じ、量子波動性や超伝導性の発現が期待される。 本年度は、Rh-Pd, Pd-Ag, Ir-Pt, Cu-Pd, Ni-Pdの各合金ナノ粒子系において特異な水素吸蔵特性を見出した。Rh-Pd系では、Pd系へのホールドーピングに相当するので、Pdの4d-5sバンドにさらに空きを作り、水素吸蔵量の増加を見出した。これは、通常2相分離するが、固溶体合金になることで達成されていることがわかった。また、Pd-Ag系では長い間水素吸蔵しないと考えられてきたAgリッチ領域に於いて水素吸蔵特性を新規に見出した。これらのことは、X線構造解析やNMRの測定から、バルクでは熱力学的に不安定な水素化物相(β相)が安定化し水素吸蔵することが明らかになった。さらに、コア・シェル型Pd/Pt金属ナノ粒子において、効率的な水素吸蔵特性を見出し、水素処理により原子レベルの固溶体型合金化を見出しているが、Spring-8におけるin-situ測定により、その固溶体型合金化の機構を詳細に議論した。このように、配位空間やナノスケールの材料を用いて、水素を吸蔵しないと考えられてきた金属がナノスケール化することによって水素吸蔵するという、常識をくつがえすようなことが実現された。
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