研究概要 |
対象試料R2dtoaCu(R=-H,-C2H40H,-C3H7,-C3H60H)のプロトン伝導性を調べるために、ガス圧・温度可変クライオスタット及びインピーダンス測定装置を立ち上げた。R=-C3H7を除く3種類の配位高分子は、著しい相対湿度依存性を示した。相対湿度上昇に伴い、プロトン伝導率は4〜5桁上昇し、ルベアン酸銅においては、RH=100%下で、極めて高いプロトン伝導率σp=10-2Scmを示し、固体高分子型燃料電池の固体電解質として実用化されているナフィオン膜の値に匹敵するものである。すべての試料において、イオン輸率はほぼ1であった。R=-C3H7の配位高分子は、湿度依存性を示さないが、σp=10-8Scmの値を示し、代表的なプロトン伝導体である氷の値とほぼ同じである。プロトン伝導性と水の含有量の関連を調べる目的で、熱重量分析と示唆熱分析を行った。熱重量分析から、R=-C3H7の配位高分子以外は、相対湿度(RH)に応じて水分子を吸収・放出することがわかった。常温、RH〜100%においては、多量の水(ダイマー当たり3分子)を含む。また、水分子が抜けるにもかかわらず、155℃まで粉末X線パターンが変化しないことから、配位高分子の骨格構造は保たれていることがわかった。したがって、プロトン伝導率の上昇は配位高分子中に含まれる水分子の量に依存しており、本配位高分子中で発現されるプロトン伝導性は少なくともポリマー中に含まれる水分子を媒介としていると考えられ、燃料電池の固体電解質であるナフィオンにおけるプロトン伝導の機構に類似しているものと推察される。R=-C2H40Hの試料では、290K付近で活性化エネルギーが大きく変化する。固体NMR、比熱及び中性子準弾性散乱等の実験により、配位高分子中に含まれる水分子の運動の自由度の凍結が関与していることが明らかになった。
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