分子や固体の表面は分子認識の場となる。その化学的性質を理解し、構造を設計するためには、表面での配位空間の形状とその機能に関する検討が必要と考えられる。この観点から、本研究では化学的に重要と考えられる配位空間の形状を定義する理論的概念を提唱し、その概念に従った電子状態計算をおこなうことによって形状を定量的に解析する研究を行った。具体例として、水、二酸化炭素など、代表的な小分子の分子表面に関する形状の定量化を行った。これらの計算結果から、本手法により得られる分子形状は、非共有電子対のような電子状態的特徴を反映したものになることがわかった。また、内部空孔を有する化合物としてクラウンエーテルに注目し、それに捕獲されることが知られているナトリウムイオンに影響を与える空間形状を決定した。さらに、配位空間化学で最重要課題と考えられている水素分子の吸蔵に関する材料設計を意識して、水素分子の形状解析とそれを捕獲(収着)するための分子材料の設計と数値計算による検討を行った。さらに、分子形状解析に関する理論手法を応用することによって、理論計算から配位空間構造を設計する手法を新たに提唱した。 加えて、本特定領域研究で実施されている実験研究を支援する目的で、CdSeナノ微粒子の電子状態、RhMo多核錯体の構造と電子状態、Feサレン錯体の構造解析に関する共同研究を実施した。
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