研究概要 |
我々は,表面の配位空間としで"点","線"、"面"の構造をレドックス活性な分子ユニットを利用して構築し、これらの構造の特性を活かした新しい光・電子機能の発現を目指した。最終年度にあたる本年度は表面での分子配向の制御による表面での分極を外場でコントロールすることを利用した分子メモリ機能およびパターン基板への分子の選択吸着とDNAナノ配線について検討した。表面に自己組織化した分子の配向を制御するために、表面に多点吸着できるアンカー基として2個あるいは4個のホスホン酸基をもつ三座配位子LP(2個の場合)およびXP(4個の場合)を合成し、それらのアンカー基をもつ一連の金属錯体ユニット、単核錯体[Ru(XP)_2],[Ru(XP)(tpy)],[Ru(XP)(btpb)],二核錯体[M_2(XP)_2(btpb)]および三核錯体[M_3(LP)_3(ttpb)](M=Ru or Os;btpb=1,4-ビス(2,2':6',2'-ターピリジル)ベンゼン,ttpb = 1,3,5-トリス(2,2':6',2'-ターピリジル)ベンゼン)を合成した。垂直配向したルテニウム錯体[Ru(XP)(btpb)]および[Ru_2(XP)_2(btpb)]を固定した修飾ITO電極にRu(II)->Ru(III)が起こる正電位パルスを与えた後ではカソード光過渡電流が観測されるが、負電位パルスでは逆にアノード光過渡電流が観測された。このように、最初に印加する電位パルスに依存して観測される光過渡電流の方向が逆転するメモリ効果が観測された。しかし,平面配向する三核錯体[Ru_3(LP)_3(ttpb)]では電位パルスを印加してもカソード電流は観測されないことがわかった。電解質濃度や溶媒の影響を受けること、流れる電気量が電子移動の場合に比べて100倍以上小さいことから、表面分極によるキャパシタンスの変化がメモリ効果に寄与していることが示唆された。この現象は垂直配向させた分子を利用した電位パルスによる書き込み、光電流による情報の読み出しとして分子メモリとしての応用が期待される。また、垂直配向分子をAu/SiO_2パターン基板上に選択吸着させた後に、上部にDNAインターカレーター部位を持たせることでDNA配線を行うことが可能となった。
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