金はバルクの状態では不活性であると考えられてきたが、平均粒径が10nm以下になると触媒活性を示すことが知られている。特にサイズが2nmを切ったクラスターになると量子サイズ効果により劇的な物性変化が起こることから、金をクラスターサイズでナノ空間に配置させることは、新たな触媒機能の発現が期待できる。 そこで本研究ではナノ空間を有する担体への金クラスターを担持した触媒の調製を検討した。まず、一次元ナノ空間(pore size=6×8Å)を有する多孔性有機銅錯体(配位高分子)を担体に用いた場合に、平均粒径が約2nmの金クラスターを担持することに成功した。一部の金クラスターは錯体の一次元ナノ空間内に閉じ込められている可能性があるが、ほとんどの金クラスターは1〜2nmのサイズを有しており、ナノ空間内だけではなく、多孔性錯体の結晶表面上でも金クラスターが分散・固定化されていることが示唆された。 異なる孔径(pore size=4×6Å)を持つ多孔性有機銅錯体を担体として用いると、金ナノ粒子の平均粒径は約3.2nmとなった。これらの結果から多孔性錯体の孔径や結晶構造が異なると、得られる金ナノのサイズが大きく異なることが示唆された。 金担持前後の多孔性錯体の粉末X解回折(XPRD)を行ったところ、担持前後でXRDパターンはほとんど変わらず、金クラスターを担持しても結晶構造はほぼ保持されていることが明らかとなった。またporesize=6×8Åの多孔性錯体に金を担持した試料は、XRDにおいて金の(111)面に由来するピークがほとんど見られなかったことからも、金のサイズの小さいことが示唆された。 これまで高分子担体を用いて金ナノ粒子を担持する場合、金のサイズを2nm以下のクラスターだけを担持することは非常に困難であったが、多孔性銅錯体を用いることによって、定量的に2nm以下のクラスターを得ることに成功した。
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