研究概要 |
1. P波トモグラフィー 既存データにフィリピン海のOBS、BBOBSなど海底地震計や、極東ロシア、中国の広帯域観測点の波形データから測定したP波時刻データをすべて加えて全マントルトモグラフィーを行った。極東ロシアから中国、フィリピン海にかけて、滞留スラブを含むマントル構造が高分解能で求まった。特に、これまで鉛直に連続して下部マントルへ沈み込んでいると考えられてきたマリアナ・スラブが660km不連続面で断裂して下部マントルに沈み込んでいることが明らかになった。また、中部日本の深さ300km以深でスラブが横方向に裂けた後に遷移層で滞留していることも明らかになった。 2. マントル不連続面 フィリピン海のBBOBデータ、中国と極東ロシアの広帯域観測点の波形データを用いてレシーバー関数解析をおこない、410,660km不連続面の凹凸を求めた。マントル遷移層内にスラブが横たわっているところでは660km不連続面は680-695kmと深いが、その周辺域では660-670kmと全地球平均値に近いことがわかった。この深さとP波トモグラフィーで求められたP波速度異常から、鉱物の高圧実験の結果を用いて滞留スラブの温度と水含有率を求めた。その結果、滞留スラブ内部では300-500度程度周囲よりも低温であり、水はほとんど含んでいないことがわかった。また、中国の下の滞留スラブでは660km不連続面の下700-750kmに別の不連続面があることが分かった。これはスラブ内部のガーネット成分がペロブスカイトに相転移しているものだと考えられる。 3. データセンターでは、フィリピン海広帯域海底地震計と極東ロシア広帯域地震計のデータを管理し、特定領域研究者の利用の便宜を図った。
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