研究課題/領域番号 |
16076203
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 秀夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (50114351)
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研究分担者 |
内田 慎一 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (10114399)
小形 正男 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (60185501)
上田 寛 東京大学, 物性研究所, 教授 (20127054)
黒木 和彦 電気通信大学, 電気通信学部, 教授 (10242091)
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キーワード | 銅酸化物高温超伝導体 / 鉄系超伝導体 / STS / バナジウム化合物 / 多軌道模型 / 非平衡相関電子系 |
研究概要 |
(青木)黒木のグループとともに、鉄系超伝導体の電子構造、ならびに超伝導メカニズムを提唱した。これは、本研究課題のうち、新らしい物質における電子機構超伝導、多軌道相関電子系における超伝導、という当初の研究目的に合致する成果である。また、強相関電子系における非平衡現象を、光励起されたモット絶縁体における非平衡分布を初めて求め、ならびに集団励起モードを調べ、解明への路を拓いた。 (内田)Bi系高温超伝導体は、BiO面の結晶変形、BiとSrのサイト置換等乱れを多く含む物質である。それが超伝導転移温度を低下させる要因となっていることを、結晶成長による乱れの制御とSTM/STSを用いたミクロな電子情報とをフィードバックさせることにより明らかにした。これをもとに乱れを極力減らすことを試み、Bi2Sr2CaCu2O8+δのTcを98Kまで上昇させることに成功した。 (小形)ビスマス系を念頭にスピン軌道相互作用がある場合のディラック電子のホール伝導度を計算し、特異なバンド間遷移による寄与がバンド端で大きくなることを示した。また鉄系超伝導に関して、状態密度が小さくクーロン斥力の遮蔽が小さくなる場合に、SDW転移は抑えられるにも関わらず超伝導が増強されることを示した。 (上田)擬一次元導体ベータバナジウムブロンズについて圧カー温度電子相図を確立し、圧力誘起超伝導が現れるさらに高圧域に非超伝導金属相が現れること、超伝導臨界圧近傍ではフェルミ液体的になること、超伝導相は反強磁性電荷秩序絶縁体相に接していることなどを見出した。結果、超伝導発現には次元クロスオーバーや電荷揺らぎとともに反強磁性揺らぎも重要な働きを持つことなどを明らかにした。 (黒木)鉄系超伝導:新しく発見された鉄ニクタイド超伝導体に対して、第一原理計算を元に5バンドの有効模型を構築し、非連結フェルミ面を有効に利用したスピン揺らぎ媒介メカニズムを提唱した。この有効模型はその後、国内外の多くの理論グループに用いられている。 新規超伝導探索:銅酸化物、鉄ニクタイド化合物以外のd電子系高温超伝導体を探索するため、銅酸化物の多軌道模型、ならびに既存物質以外の第一原理計算に基づく有効模型構築に着手した。
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