研究課題
遷移金属酸化物における様々な面白い現象は、母体のいわゆるモット絶縁体にキャリアを導入することにより現れる。モット絶縁体におけるエネルギーギャップの起源は電子間の多体相互作用にあり、通常のバンド絶縁体もしくは半導体に見られるように単純な1電子近似に基づくバンドギャップとは本質的に異なると予想される。よって、モット絶縁体とバンド絶縁体の良質なヘテロ接合を作製したとき、通常の半導体接合には見られない、強い電子相関効果が効いた、何らかの新しい現象が見出されるのではないかと期待されている。一方、このようなヘテロ接合を用いて、遷移金属酸化物薄膜のキャリア密度を調整し、その物性を制御しようという試みがなされている。例えば、電界効果トランジスター(FET)を作製し、強電界によりキャリアドーピングを実現しようとする試みが盛んに行われている。そこでの問題点は、要求されるキャリア密度が通常の半導体の場合と比べて約一桁以上大きい(10^<13>cm^<-2>以上)ことである。そのためには、非常に大きな電場をかけねばならず、絶縁耐性の高い薄膜が必要となる。われわれは、チタン酸化物を基板として様々な遷移金属酸化物薄膜の作製を行ってきた結果、n型チタン酸化物基板とp型遷移金属薄膜からなるpnヘテロ接合において、紫外光照射により光キャリア注入(photocarrier injection : PCI)が効率的に起こることを見出した。例えば、ルチル型酸化物VO_2薄膜をNbドープしたTiO_2基板上に作製した系、ペロブスカイト型マンガン酸化物(La,Sr)MnO_3と銅酸化物超伝導体YBa_2Cu_3O_XをNbドープじたSrTiO_3基板上に作製した系、また、有機半導体を同じくSrTiO_3基板上に作製した系において光キャリア注入を行った。また、紫外光照射下における光電子分光実験を行い、光キャリア注入の機構を明らかにした。
すべて 2004
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