研究概要 |
強い磁気相互作用を媒介とした新たな超伝導発現機構を持ったスピン一重項d波やスピン三重項状態p波・f波のクーパー対対称性を有したエキゾチック・ペアリング超伝導体の探索合成・物性評価を行い,その理論的解明を目的に研究を行っている.対象物質としては,幾何学的フラストレート系の三角格子やカゴメ格子を含む層状酸化物である.その結果,水を層間に挟んだコバルト酸化物系で発見されている超伝導体Na_xCoO_2・yH_2Oに関して,核磁気共鳴(NMR)によるナイトシフトや核四重極共鳴(NQR)による縦緩和時間の測定を詳細に行うことによって,三角格子の磁気相関を媒介したスピン三重項超伝導体である可能性が高いことを実験的に明らかにした.理論的にも軌道縮退と小ホールによる強磁性揺らぎを介して6個のホールポケットがf波のスピン3重項ペアリングを形成する超伝導となることを示し,実験結果を説明することができた.また,銀のカゴメ格子を含む層状酸化物Ag_5Pb_2O_6が転移温度は50mKときわめて低いが超伝導を示すことを見出した.4d遷移金属元素の銀は周期表で銅の真下に位置し,銅酸化物高温超伝導体の電子状態との詳しい比較が今後の研究課題となる.その他,4d遷移金属元素Nbを含む新パイロクロア酸化物の開発に成功し,その低温物性を明らかにした.また,高温超伝導体(T1系)に関して弱磁場でのNMR実験を詳細に行うことによってVortex Coreの振る舞いを調べ,反強磁性オーダーが存在せずブラッググラスになっている可能性を示した.また理論的には,銅酸化物超伝導に関してはLa系とYBCO系のTc違いをd-Pモデルを用いて説明することができた.さらに,UPt3のスピン3重項超伝導のメカニズムをクーロン斥力の3次摂動し実験で示されているスピン3重項の超伝導を理論的に再現することができた.
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