研究概要 |
水分子をインタカレートしたコバルト酸化物超伝導体Na_XCoO_2・yH_2Oに関して,ソフトウェア化学の手法を用いてその超伝導転移Tcが1.8K未満から4.6Kまで変化する試料を合成することに成功し,それが^<59>Co核のNORの共鳴周波数ν_οによって系統的に整理できることを見出し,超伝導・磁気相図を作成することに成功した.その結果,この系の超伝導相は,強磁性的な相と隣接していることが明らかになり,超伝導機構が磁気的な相互作用を媒介している可能性が高いことが明らかになった.また,^<23>Na核のNMRの緩和時間T_1の測定から超伝導になる試料も磁気秩序を示す試料も転移温度状態において母体のNa_<0.7>CoO_2同様,強磁性的なスピン揺らぎが支配的で有ることが明らかになった.また,相関の強い電子系の超伝導の転移温度を求める理論を確立した.クーロン相互作用の強さが引力の有効質量を決定する.有効質量が大きいと繰り込み因子が小さくなり,転移温度が低くなる.これらの結果を4次摂動を用いたカゴメ格子を含む層状酸化物Ag_5Pb_2O_6(転移温度は52mK)について,単結晶の磁化率と電気抵抗率の詳しい測定から第I種超伝導体であることを明らかにした.また比熱や量子振動からは、有効質量の軽いほぼ自由電子とみなせるフェルミ面を持つ超伝導体であることを明らかにした.つまり,酸化物の中に単純な単一バンド金属電子状態を作り出した上で,それを超伝導化できることを示したことになる.
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