研究概要 |
本研究では,特殊温度環境下で利用できるアクチュエータに関して研究を行っている。レーザ照射による急速な熱膨張を利用した駆動機構(熱インパクト駆動)においては,熱振動子のレーザ照射応答を詳細に測定することで,駆動に適したアクチュエータの材質,形状,レーザ照射方法を検証した。その結果,0.3mm角(材質:真鍮)では,シャッターによる照射の単純なオンオフでは加熱・冷却の速度が同等であること,片側照射では曲げ変形が発生すること,また連続波レーザの場合,非対称スリットカムの回転でレーザ照射の開閉を制御することで,駆動に適した加熱・冷却の時間応答を生成できることを確認した。また材質の比較により真鍮がレーザの熱吸収率の点において優れており,形状の比較による熱伝導,温度上昇の寸法効果を確認したことで,駆動を実現可能な形状を考案した。以上,設計方針を基に熱インパクト駆動を実現するアクチュエータの作製を超精密加工により行った。またバイメタルを用いた自励振動現象を考案し,これを基本にした振動型,転がり型アクチュエータを提案した。これは丸めたバイメタルを熱源上に配置するのみで実現され,将来的に,搬送システム,ディスプレイ等のアクチュエータや温度センサとして利用できる。本年度は,駆動を実現するアクチュエータ構成を検討し,熱電対,サーモグラフィーによる温度分布の時間応答の測定により,推進力が熱伝導の時間差と非対称性,それに伴うバイメタルの変形に起因していることを突き止めた。また超伝導材料を用いた低温用の軟磁性材料の磁気浮上システムについて,磁性ヨーク,超伝導材料の形状の点から磁気回路の改善を行い,剛性や浮上力等の向上を図った。更に簡単な磁気浮上搬送機構を試作し,この実用性を検証した。
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