研究概要 |
本研究では,特殊温度環境下で利用できるアクチュエータの開発を行っている.バイメタルを用いた熱駆動型アクチュエータに関して,温度勾配のみで推進力また自励振動が発生する原理を実験的に検証した.サーモグラフィーによる運動中の詳細な温度分布の測定により,推進力が,バイメタルの温度分布の非対称性,そして進行方向,熱源との接点後方に高温部が存在することで生じる連続的な曲げ変形に起因することを確認した.また単一金属の帯を巻いた振動子でも同様の自励振動が発生することを発見し,(運動中の帯厚み方向の温度勾配がわん曲変形を生じると思われる),これにより本原理を高温下で利用する場合の実用的なアクチュエータの構成を考案した.また電気炉内に抵抗ヒータを配置することで高温下の温度勾配を実現し,この実験で,300℃の雰囲気中で,プラス100℃の熱源で自励振動現象が発生することを確認した. また鉄ガリウム合金を用いた磁歪アクチュエータに関しては,液体窒素中(-196℃)でも室温と同等の変位を発生すること,それが高温超伝導材料のピン止め効果で保持できることを確認することで,これが極低温下の精密位置決め装置として利用できる可能性が示された.また同磁歪材料に関しては超精密加工により2mm径の振動子の試作を行い,この材料で構成したアクチュエータが,小型化で頑健性,高速な応答性,低電圧駆動など従来の圧電材料に秀でた特徴を有することを示した.高温超電導材料を用いた軟磁性材料の磁気浮上に関しては,ピン止め効果を模擬した有限要素解析を行い,磁束分布の考察から,浮上力(正の剛性)が,磁束の浮上体突起部の上面から側面に移動に起因して発生することを確認した.また突起部の形状,超伝導材料の厚さをパラメータとした吸引力の詳細な測定により,浮上特性を向上させる磁気回路の設計指針を考察した.
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