研究概要 |
摩擦駆動メカニズム解析のため,コンタクトメカニクスの概念を取り入れ,弾性接触と摩擦力を考慮した摩擦駆動の物理モデル構築を行っている。そして,このモデルに基づく摩擦駆動プロセスと,レーザドップラ振動計による計測結果を対応させ,モデルの定性的な妥当性を検証した。その結果,これまで考えていたのと異なるスライダ突起挙動を示していることがわかり,動作状況への理解を深めた。さらに,定量的な動作状態の把握に向け,モデルの精緻化と動作特性との対応関係を明らかにすることの検討を進めている。摩擦駆動プロセスの詳細を明らかにすることにより,動作状況を適切にコントロールすれば,これでの最小駆動量がサブナノメートルのオーダーであったが,さらに微細な移動量を実現し,位置決め精度を向上できるものと期待できる。 弾性表面波モータの制御に関しては,モータの動的な応答特性に関して詳細を検討するために,過渡的な動作特性の詳細を計測により求めた。その結果,これまでの単純な不感帯と一時近似によるモータ速度応答特性だけでは,モータの挙動を制御対象としてモデル化するには不十分であり,応答に履歴を持ったような特性として計測されることを明らかにした。この履歴特性と見られる応答について詳細に検討したところ,モータの一次遅れ特性との関連もあり,履歴特性と遅れとの十分な判別が難しいことを明らかにしている。この問題の解決により,制御性能が格段に向上するものと期待している。 以上の検討により,弾性表面波モータの微細な動作とダイナミックな挙動についての検討が深まりつつあり,精密なモーションコントロール実現に向け知見が深まるとともに解決すべき課題を明確にした。
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