研究概要 |
触覚認識において,指先に加わる圧覚だけでなく滑り力が刺激として重要な役割を有していることがわかってきている.本研究では,一つの触覚呈示ポイントにおいて圧覚と滑り覚が同時に呈示できる触覚呈示ポイントを開発し,それを多数配置してアレイ状に構成した触覚ディスプレイを開発することを目的としている. 本年度では,2軸のアクチュエータ・アレイを構成する基本要素を開発するため,2本のバイモルフPZTアクチュエータの動作方向を直交させるように直列に接続したアクチュエータを新しく製作しその動作特性を検証した.バイモルフPZTアクチュエータとして,点字セルSC9およびSC2(いずれもKGS社製)に使用されているアクチュエータを使用した.先端に発生するxおよびy方向の変位と力を同時計測するために,レーザー変位計,2軸力覚センサ,x-yテーブル,DC電源,D/Aコンバータボード,コンピュータなどから構成される実験システムを製作した。また,上述の実験的検討を進める一方で,今後のアクチュエータ製作の設計指針を得ることを目的として,梁近似による簡易計算式の導出も行った. 実験では,先端がフリーな状態での電圧-変位関係を求める実験と,電圧一定条件で変位-力関係を求める実験を行った.後者の実験では,一定電圧として50,100,150,200Vの4条件を採用した.その結果,先端がフリーな状態では,xおよびy方向ともに200Vの印加電圧で約1mmの変位を生じた.しかし,負荷が加わると,2本のアクチュエータのうち,先端に位置するアクチュエータの運動方向(y方向)に関するバネ剛性が,根元に位置アクチュエータの運動方向(x方向)に比べて約1/5に低下することがわかった.このアクチュエータを呈示装置として採用した場合,xとy方向のせん断力の値が異なることを意味しており,改良を要することがわかった.また,定式化した簡易計算式の計算結果と実験結果の比較も行った.その結果,x方向については実験結果と計算結果はほぼ一致したが,y方向については大きな差異が認められた.以上の結果は,いずれも根元のアクチュエータの剛性不足によることが原因であるため,次年度で改良設計を進める予定である.
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