研究概要 |
近年,ナノテクノロジー,微小電気機械システム(MEMS)技術の進展は著しいが,実用化にあたっては従来の寸法の機械とのギャップが存在し,それを埋める必要性が叫ばれている.そのため,中間のメゾスケール機械にも注目が集まっている. 本研究では,平成21年3月までにナノメータからミリメートルオーダまでの領域で物体を操作・観察するシステムのための位置決め機構を開発することを目的とする.そのために,粗動と微動を一つの小型の機構で実現するアザラシ型機構を用いる. 本年度は以下の2点について検討した. 1.微動のための圧電素子の駆動法の開発 電流パルスをパルス密度変調することで高分解能送りを実現する方法を提案するとともに,プロトタイプを用いて原理を確かめた.変位拡大率が10倍程度の拡大機構の出力で,1パルスあたりの変位量が7nm,全ストロークが70μmとなった.ストロークと分解能の比は10000倍であり,13ビット相当のダイナミックレンジが得られた.また,ひずみ率はリニアアンプ駆動と同等であった.実質的には電荷制御となるため,ヒステリシスはリニアアンプ駆動で7.3%となる条件で,0.3%であった. 2.高速化・高分解能化のための機構の設計と試作 1自由度機構を製作した.シミュレーションにより,摩擦機構の形状と配置および,それらと圧電素子を接続する部分の剛性などを検討した.設計には有限要素解析を用いた.高速化のために,これまで摩擦機構として用いていた電磁石の代わりに,圧電素子によるクランプを採用した.これにより,クランプ部の共振周波数を5kHz程度まで高めることができた.(1)の駆動回路を用いて微動させたところ,サブナノメートルオーダのステップ状の動きが観察された.
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