研究概要 |
本研究では,ナノメータからミリメートルオーダまでの領域で物体を操作・観察するシステムのための位置決め機構を開発することを目的とする.そのために,粗動と微動を一つの小型の機構で実現するアザラシ型機構を用いる.平成19年度は以下の項目を実施した. (1)真空への対応 真空環境でも使用できれば,走査型電子顕微鏡(SEM)内でも使用可能となる.そのために,真空チャンバ内で1自由度機構の移動特性を測定した.真空下のしゅう動面と走行面の凝着の防止や,磁気的特性としゅう動特性を同時に満たすために,走行面に潤滑膜(MoS_2)や硬質膜(TiN)などの表面処理を施した.摩擦力を変化させるために,進行方向に対し垂直に取り付けたおもりを圧電素子で急激に駆動するときに発生する慣性力を利用した.機構のしゅう動面と走行面の摩擦係数が大きい方が動作は安定した.しかし同種金属では凝着が起こりやすいため動作が安定しなかった.摩擦係数が小さいと正負の変位が異なる傾向があった.これは真空中で特に顕著であった. (2)マイクロマニピュレータの構築 L字形3自由度アザラシ型機構で平面内のxyθ方向に動き,1自由度機構でz方向に動くマニピュレーションシステムを構築した.ビジュアルフィードバックにより50μm程度のガラスビーズを操作することができた. (3)電流パルス駆動法のシミュレーション Martinのモデルの力係数を負荷に応じて変化させることで,負荷を加えたときの変位をシミュレーションした.実験と傾向は一致した.
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