昨年度までの研究で、In^<3+>をドープしたSnP207が無加湿の中温領域(150-350℃)で高いプロトン導電率を示し、電気化学デバイス(燃料電池、リアクター、ガスセンサー)の有望な固体電解質になり得るともに、これらのデバイスが中温作動の特長を活かして従来のものよりも特異な機能を持つことを報告してきた。具体的には、燃料電池において:(1)無加湿条件下で安定して放電すること、(2)PtアノードがCOに対して全く被毒されないこと、(3)Mo_2C-ZrO_2複合アノードが温度上昇とともにPtアノードと同レベルの水素酸化能を示すこと、またリアクターとセンサーにおいて:(1)中温領域になるとNOxが共存する大過剰O_2よりも選択的に電解質のプロトンと反応すること、(2)PtカソードにRhとBaを添加することでNOx分解の電流効率が数倍高まること、(3)その電極がNO_2だけでなくNOにもポジティブな混成電位を示すこと、などを見出した。 今年度は、特に燃料電池とリアクターで中温作動のさらなる特長付けを検討した。まず燃料電池においては、非貴金属によるPtカソードの代替化、並びにジメチルエーテル(DME)を中心とした燃料多様性の評価を行った。またリアクターにおいては、電解質粒子表面上にナノサイズの局所電池を形成することで、NOx選択還元を高活性化する、新しい反応プロセスの開発に努めた。以下に得られた成果の概要を示す。 ・Pt代替カソードの開発では、正方晶ZrO_2がO_2還元反応に有効な触媒であった。そこで、前年度に見出されたPt代替アノードMo_2C-ZrO_2複合電極と組み合わせ、Ptフリー燃料電池を構成したところ、中温領域において良好な発電特性を示すことが分かった。 ・DME燃料電池の開発では、Pt-RuアノードがDMEの直接酸化反応に高い活性を示し、特に300℃では水素燃料に対する活性と同レベルであることが見出された。 ・ナノサイズ局所電池型触媒の開発では、提案したdeNOxコンセプトを電気化学的手法によって実証するとともに、そのコンセプトに基づいて設計した触媒は従来の触媒に比べて、広い温度ウィンドーを持ち、また低温でも90%以上の高いN_2選択率を発揮した。
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