現在、固体電解質材料の固体酸化物燃料電池や全固体型リチウム二次電池等への応用が進められているが、実用化の為には導電特性、電極反応特性の一層の向上が必要とされている。我々はナノレベルで構造制御を行った固体電解質薄膜によりヘテロ界面における歪みの導入や欠陥濃度制御によりイオン導電特性の飛躍的な向上を目指しドライプロセスであるレーザアブレーション法を用いて薄膜の作製を行っている。 今年度は昨年度に引き続きプロトン導電体Y添加BaZrO_3の焼結体、薄膜の作製とLiイオン導電体Li_2SiO_3の薄膜の作製を行いイオン導電特性の膜厚、結晶性依存性等を評価しさらに人工格子多層膜製作を行った。本年度の進捗状況は以下のとおりである。 1.レーザMBE法によるナノイオニクス人工格子・多層膜の作製 60% 2.BaZrO_3系プロトン導電体バルク材料の微細構造と導電性評価 75% 3.レーザアブレーション(PLD)法によるLi導電性酸化物薄膜の作製 65% 現在までの結果は、BaZrO_3、Li_2SiO_3薄膜いずれにおいても薄膜と基板のヘテロ界面近傍で導電特性が向上するという結果が得られた。それが空間電荷層による欠陥濃度の上昇が原因か、界面において導入される歪みの影響なのかは今後詳細な検討が必要であるが、今回の結果はプロトン導電体-絶縁体の人工格子により導電特性が向上する可能性を示唆しており、来年度にその検証を行う予定である。
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