研究概要 |
本グループでは、有機分子と無機イオンとの自己組織化を利用して、サイズや形を制御したナノ構造イオン伝導体を作成し、そのナノ構造とイオン伝導特性の関係を解明することを目的とする。 本年度は、これまでに開発してきた、メソポーラス複合イオン伝導体とナノ分相イオン伝導性ガラスについて、イオン伝導度向上とナノ不均一構造形成のメカニズムを明らかにするために、NMRやFE-SEMを中心に構造とイオンダイナミクスを測定し、ナノイオニクス効果の要因解明を進めた。 (1)メソポーラスアルミナ複合体のNMRによる精密測定 メソポーラスアルミナの細孔中に挿入したLiI, Li2ZnI4について、6Li-MAS-NMRの精密測定を行い,3種類の異なる環境にあるリチウムイオンを検出した。1つはバルク結晶中のLi,2つ目は界面でプロトンに近接したLi,3つ目は界面アモルファス層と思われるLiで、伝導度の組成依存性との相関から、第三のLiが伝導度増強効果に最も寄与していると推測される。 (2)蒸気圧制御NMR装置の開発とNafion膜への適用 プロトン伝導体のイオンダイナミクスを精密に調べるため、蒸気圧制御NMR装置を用い,Nafion膜中でのプロトンと水分子の拡散係数を測定した。その結果、含水率1.3付近でイオンクラスターが孤立ミセル化する事によるパーコレーション臨界を示す事が分った。 (3)銀カルコゲナイド分相ガラスの構造解析と伝導機構解明 Ag-Ge-Se, S系ガラスについて、FE-SEM, EPMA, Se-77NMR等の測定から、この系における半導体・超イオン伝導体転移は、ナノメートルからミクロンスケールにおけるミクロ分相構造形成による事が明らかとなった。
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