研究概要 |
イオン導電体からのイオンの流れによって,その表面に動的に生成する非平衡状態は「NEMCA」効果の原因とされる。本研究では,表面吸着種の存在状態を動的・定量的に把握する手法として化学ポテンシャルプローブ,電気化学in-situ PMIRRAS,イオンエミッション等,独自の手法を確立し「ナノNEMCA」効果発現の可能性を探ることを目的とする。本年は主に,測定装置の整備・改良を行った。 表面化学ポテンシャル測定:微細な酸素センサプローブを用いた電気化学反応場の酸素ポテンシャル分布測定を高温で安定に行うため,試料加熱部および遮熱機構を改良した。さらに,近赤外線カメラを購入し,測定時の温度を正確に把握するための校正を行った。また,この近赤外線カメラを用いることで,電気化学反応場の局所的な温度変化をin-situ測定できることもわかった。この方法で,酸素電極の通電による温度変化を測定したところ,反応のエントロピー変化から予想される通り,酸素発生側に比べて酸素吸収側で大きな発熱があることが確認できた。 高温電気化学PMIRRAS:高温で赤外吸収測定が可能なPMIRRAS(偏光変調高感度反射法)を用いて,電極表面吸着種の通電による変化を調べた。YSZ上の白金電極をモデル材料として選び,不純物ガスの影響を調べたところ,電極の活性は表面でのSi-O振動の出現と密接な関係がある事がわかった。測定系におけるSiの発生源の特定を進めている。 イオンエミッション:真空中に設けた引出し電極にイオン導電体・電極系の表面を対向させて高電圧を印加することで表面吸着イオンを脱離させ,質量分析計で同定する。本年は,特定の共存ガスの存在下で,表面に生成するO-イオンの濃度が大きく変化する事を見いだした。さらに,イオンエミッションによって生成したO-が通常の酸素とは異なる反応性をもつことを示す結果を得た。
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