研究概要 |
イオン導電体の表面に通電によって生成する非平衡状態を動的に把握する測定手法を整備し,これをヘテロ界面などのナノイオニクス系に適用することで,「ナノNEMCA」効果発現の可能性を探ることを目的として研究を行った。 1.測定手法の整備 放射光を利用したX線吸収微細構造(XAFS)測定を,高温の制御雰囲気下で電気化学反応を進行させながら行うための実験装置を開発した(A03班内本助教授・雨澤助手との共同研究)。これにより,通電に伴う電極の酸化還元状態の変化を印加電圧と対応させることが可能となった。 偏光変調高感度赤外反射吸収分光(PMIRRAS)を各種の系に適用し,この手法が特に金属電極上のCOの吸脱着の評価に効果的であることがわかった(A04班東北大八代助手との共同研究)。 イオンエミッション法については,表面からのイオンの放出機構を検討し,表面評価手法として解決すべき課題を明らかにした 2.酸化物イオン導電体系 昨年度見出した(La, Sr)CoO_3/(La, Sr)_2CoO_4相界面での酸素気-固相交換反応の特異な促進効果について,これらの組成の薄膜を積層した試料をPLD法によって作製し,同位体イメージング,および,XAFS測定を行った。(La, Sr)CoO_3上に(La, Sr)_2CoO_4を積層した界面では,多結晶の混合相の場合と同様に,同位体交換が盛んに進行することがわかった。一方(La, Sr)_2CoO_4がCeO_2基板に直接接触する界面ではこのような促進効果はみられなかった。この膜の各部分について,マイクロXAFS測定で,Coの平均価数を評価した。基板に単独で製膜した(La, Sr)_2CoO_4膜と(La, Sr)CoO_3膜では,同一条件でのCoの価数が大きく異なるのに対し,積層部分の(La, Sr)_2CoO_4は,Co価数が変化し,(La, Sr)CoO_3に近づくことを見出した。
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