研究概要 |
本研究では,ナノイオニクスの考え方が固体酸化物燃料電池(SOFC)の高機能化にどの様に役立つかを明らかにすることを主題とし,セラミックス多層膜からなるSOFCの技術展開には必須である高温でのセラミックス多層膜の機械的安定性に関する計測法の開発を並行して進めている.その結果,機械的歪みがセラミックスの物性に及ぼす影響についての新たな知見を様々なかたちで得ることに成功している.本年度の主な成果は以下の通りである. (1)ナノヘテロ構造化がSOFC要素過程に及ぼす特異効果 1.ヘテロ界面の不整合による歪みと物性変化の関連解明:空気電極用コバルト系ペロブスカイト型酸化物を題材として多層膜化の物性への影響を探求した.その結果,膜化により導電電子の局在化が顕著におこり,導電性の雰囲気温度依存がバルク体と全く異なってしまうことなどが見いだされた. 2.その場ラマン分光による反応場の活性化学種評価:ニッケル電極上への炭素析出が電極電位によって変化する様子のその場計測に世界で初めて成功した. 3.ナノ分散構造の長期安定性に関する評価:環境制御型走査電子顕微鏡を用いたその場計測により,通電条件下でのNi-YSZサーメットの酸化還元に伴う粒成長の観測に世界で初めて成功した. (2)SOFC単セル発電試験と機械的安定性,外部応力場による歪みと物性 1.外部応力場と物性:MPaレベルの一軸応力により,安定化ジルコニアの酸化物イオン導電率がパーセントレベルで変化することが見いだされ,検証された. 2.多層膜単セルの破壊強度評価システム:アコースティックエミッション法によるSOFC運転条件下での亀裂破壊連続計測法の研究を進め,情報理論の専門家グループとの共同で,自己組織化マッピング方により,まだ萌芽的成果ではあるが,亀裂発生箇所の推移を可視化する事に成功した.
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