研究概要 |
本年度は,イオン伝導性酸化物ナノ結晶粉末を常温超高圧プレスすることにより,高温の焼結を経ないでバルク体とする方法を開発し,ナノグレインのイオン伝導体における特異な粒界伝導を見いだした.超高圧プレスはキュービックアンビル装置により約4GPaにて行い,ロッド状のほぼ100%の緻密体を形成した.作製した試料は,プロトン伝導性のBaZrO_3にYb, SC, Ybをドープした試料,GdをドープしたCeO_2(GDC),YをドープしたZrO_2(YSZ)である.プロトン伝導体BaZrO_3の粒界層は非常に抵抗が高く,粒成長に伴ってその抵抗が急激に低下し,高いプロトン伝導性が1500℃の短時間熱処理で得られる.粒界層は抵抗層として機能して,粒界の再構成とともにパーコレーションパスが形成されて(バルク+粒界を越えていく)プロトン伝導が優勢となる.また粒界層はより低温で脱水することが定性的に確認されている.一方,数nmの粒径を有するGDC, YSZでは,加湿雰囲気で粒界に沿ったプロトン伝導を示し,粒成長とともに(バルク+粒界を越えていく)酸化物イオン伝導が上昇して優勢キャリアになる.酸化物イオン伝導の見かけの活性化エネルギーもわずかに低下する.H^+MAS NMRを用いた測定から,ナノ粒子粉末の表面はOH^-基で終端しており,さらに水分子がその上に吸着しているものと推定される.常温・超高圧プレスにより,基が正に帯電した粒界コアを形成し,プロトン伝導が発現するものと考えられる. 固体電解質あるいはイオン/電子混合伝導体を用い,電圧印加条件における電極界面近傍の電子状態を直接その場観察するための実験の準備を進め,このためのドライセルを試作するとともにSPring-8において予備的な硬X線光電子分光実験を行った.
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