研究概要 |
本研究はイオン伝導体がイオンを取り入れ導電性を示す時、電極と導電体との界面、あるいは、それらと気体との三相界面近傍において電極反応に起因する電位分布が発生すると考えられている。本研究は酸化物イオン伝導体をガス雰囲気中で電圧印加・加熱しながら、その内部の電位分布を電子線ホログラフィーにより観察して、ヘテロ接触界面近傍における空間電荷層や表面電荷物理現象を解明し,燃料電池等ナノイオニクスデバイスの開発に資することを目的としている。 平成19年度は、九州大学のグループと協力してプロトン伝導体であるSrZr_<0.9>Y_<0.1>O_<3-α>にPt粒子を埋め込んだコンポジット材料の界面についても高分解能電子顕微鏡と電子線ホログラフィーにより原子構造や界面電位の観察を行った。その結果、界面における電位分布から電解質中のエネルギーバンドが25〜30nmにわたって湾曲しており、これがプロトン伝導度に大きく影響している事が分かった。透過電子顕微観察から得られたPtナノ粒子の分散状況とエネルギーバンドの湾曲領域の大きさを用いると、体積分率0.5%でイオン伝導率が激減する実験結果をパーコレーション理論により説明できることが分かった。また、酸素イオン伝導体であるZr_<0.85>Y_<0.15>O_<1.93>(8-YSZ)とPtの界面との比較も行ったが、こちらの場合は、湾曲の極性が逆で、しかもその領域は界面から6〜8nm程度であった。 更に、平成18年度から続けていた透過電子顕微鏡その観察用ガス導入システムを完成した。平成20年度には、試料をガス中で加熱しながら電圧を印加したその場観察を実施する予定である。
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