酸化物系イオン導電体/酸化物半導体などの異種接合界面を形成すれば、種々のガス種に対して特異的な応答が達成でき、センサ特性の飛躍的な改善や作動条件の大幅な拡大ができる可能性がある。本研究では、検知極材料の特性評価・制御を行うことにより、特異ガス検知機能の発現メカニズムを明確にし、これまでにない優れた特異検知機能を発揮する高度ガスセンシングデバイスを設計・構築することを目的として研究を進め、本年度は以下のような成果を得た。 1.検知極の作製・キャラクタリゼーション:検知極としては、スパッタ法によりNi薄膜をYSZ基板上に形成して1000℃で焼成することで作製した。スパッタ時間を変化させることにより、膜厚を30〜180nmの範囲で制御することができ、XPS測定結果よりNiO薄膜が形成されていることを確認した。 2.NO_2応答特性の評価:NiO膜厚は60nmの時に最も優れたNO2応答を示し、800℃において素子の起電力はNO_2濃度の対数と50〜400ppmの範囲で良好な直線関係をで示した。 3.NO_2感度の検知極膜厚依存性に対する考察:検知極膜厚がNO_2感度に与える影響を説明するために60nmと180nmのNiOを用いた素子の分極曲線と複素インピーダンスプロットを測定して比較した。その結果、60nmのNiOの場合にはカソード反応活性が大きく増加していることがわかり、NO_2の関与する電気化学反応に対する触媒活性を増加させることにより感度が向上していると結論できた。 4.作動温度の低下および検知極の積層による特性改善:60nmのNiO検知極を用いた素子について、NO_2感度、選択性、応答速度の改善を目指して、作動温度を低下させるとともに積層型検知極の採用を試みた。その結果、60nmのAu薄膜をNiO上にスパッタした積層型検知極を用いると同時に作動温度を600℃に低下させることにより、NO_2に対する感度を大幅に向上し、優れたNO_2選択性と応答性を達成できることがわかった。
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