主構成材料として酸化物系イオン導電体を、検知極材料として酸化物や貴金属を用いてセンサ素子を作製すれば、異種接合界面においてガス種に応じた特異的な電気化学反応が生じ、この反応に伴う電気信号を効率的に利用することで、優れたセンサ特性を発現できる可能性がある。本研究では、検知極材料の特性評価やナノレベルでの検知極形成制御を行うことにより、優れた検知特性を有する高性能ガスセンシングデバイスを設計・構築することを目指し、本年度は以下のような成果を得た。 1) 検知極の作製・評価 : Auナノコロイド溶液(Au粒径 : 5nm)を用いて、表面状態や結晶構造の異なるYSZ基板上に検知極を形成し、1000℃で焼成することでセンサ素子とした。SEM観察結果より、多結晶YSZ基板を用いた場合には、Auナノ粒子はYSZ粒界に沿って拡散し、単結晶YSZ基板を用いた場合には、結晶方位に依存した形状となることがわかった。また、XPS解析結果より、Au粒子はYSZ表面からごく浅い領域に浸入しており、伝導性が比較的高いことからナノネットワークが形成されていると考えた。 2) 表面の粗い多結晶YSZ基板を用いたAu検知極素子の応答特性 : 550℃において種々のガスに対する感度を調べた結果、C_3H_6に対して高い感度と選択性を示すことがわかった。 3) 表面の平滑な多結晶YSZ基板を用いたAu検知極素子の応答特性 : センサ素子作製直後はNH_3に対して感度を示さなかったが、45日経過後に比較的大きなNH_3感度が得られ、その後30日が経過しても応答は安定であった。 4) 単結晶YSZ基板を用いたAu検知極素子の応答特性 : 結晶方位が(100)の場合には、炭化水素やNO_2に感度を示したが、(111)の場合には、700℃という高温においてもNH_3に対して比較的良好な感度及び選択性を示すことがわかった。
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