研究概要 |
ナノプローブ顕微鏡などのナノテクノロジーを巧みに利用することによって、イオン伝導体表面やイオン伝導体と電極とのヘテロ界面におけるイオンと電子の相互作用をナノスケールさらには原子スケールで制御することが出来るようになれば、このユニークな固体電気化学的ナノ特性を利用した新たなナノイオニクス・デバイスやセンサの創製が期待される。本研究では、ナノスケールでイオン伝導体を構築して、その電極とのヘテロ界面でのイオンや電子の局所的な移動を利用した新規機能性ナノイオニクス素子の開発を目指している。我々は様々な直径サイズの多孔質アルミナをテンプレートに用いて、電気化学堆積法により金属電極とヘテロ界面構造を有する混合伝導体ナノワイヤの構築を行ってきた。これまでに、直径10〜200nm程度までのAg_2S/Ag、AgI/Ag, Cu_2S/Cu組成などのナノワイヤを構築することが可能になった。さらに、この作製した様々なサイズのナノワイヤの電気的特性評価をプローブ顕微鏡等を用いて行った。また、ナノプローブ法による複合光学評価(反射, 発光, ラマン分光)を可能とする近接場分光システムを利用してAg_2S/Agナノワイヤのヘテロ界面(混合伝導体/ナノ金属電極)における欠陥構造などの局所構造の評価を行ってきた。本年度は、昨年度に引き続いて、近接場分光システムを利用して、アルミナテンプレート内に作成したAg_2S/Agナノワイヤの局所構造をより詳細に分析した。その結果、アルミナテンプレート内のAg_2Sナノワイヤはコア・シェル構造を有し、直径30nmのナノワイヤはほとんど乱れた構造であるシェル層によって構成されていることが明らかになった。さらに、Ag_2S/Agナノワイヤの応用研究として、昨年度の作成法を改良することによって、より先鋭な走査型トンネル顕微鏡用のAg_2S結晶ナノプローブを作製した。この探針からAg原子をシリコン基板に付与するための技術開発を行った。
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