【目的】 近年、電磁波障害が社会的問題となり、準マイクロ波からミリ波帯域に対応の優れた電磁波吸収体が要求されている。共鳴周波数frが磁性体の異方性磁界HAに依存し、希土類-Fe系化合物ではfrがマイクロ波、ミリ波帯に位置する。そこで本研究では、希土類-Fe系化合物相をソフト磁性相とナノコンポジット化させパナスコピック組織形態の制御により、実効HAの低下と透磁率の増加が期待でき、マイクロ波・ミリ波帯対応の電磁波吸収体が開発できる。本年はナノコンポジット化によるマイクロ波・ミリ波帯対応の電磁波吸収体の開発を目的とする。 【実験方法】 Y9.4Fe79.5B11.1組成、化学量論組成に近いY12.4Fe81.0B6.6組成の2つのインゴットを作製した。これらのインゴットを用いてメルトスパンを行い、急冷薄帯を得た。得られた急冷蒋帯試料に対して、Ar雰囲気中923-1123Kの温度で3min熱処理を行い、さらに粗粉砕後、ボールミル粉砕した。結晶化温度はDSC、相の同定はXRD、組織観察はTEM、磁気特性の測定はVSMにて行った。また、電磁波吸収特性は樹脂複合体を作製しネットワークアナライザーを用いて評価した。 【結果】 得られた結果をまとめると以下のようになる。(1)DSC結果に単相試料では915K付近、Y_<9.4>Fe_<79.5>B_<11.1>試料では、930K、970Kの2つのピークが観察された。(2)XRD解析の結果、930KはY_2Fe_<14>B相、970KはFe3B相の結晶化温度に対応すると考えられる。(3)1023KでアニールしたY_<9.4>Fe_<79.5>B_<11.1>試料では単相に近い減磁曲線が得られた。また、Δm解析によってこの試料におけるスプリングバック率が0.3と高いことからソフト/ハード相間に何らかの相互作用が働いていると考えられる。(4)Y_2Fe_<14>B単相試料では66GHz、Y_<9.4>Fe_<79.5>B_<11.1>試料では61GHzに共鳴周波数が観察され、交換結合によると考えられる周波数シフトがあることが確認された。
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