研究概要 |
本研究では、ナノスケールで制御された希土類系磁性体の結晶粒間の磁気的相互作用を微視的立場から定量的に把握するため、以下の項目を研究目的とする。 1.種々の希土類金属間化合物のバルク状態での磁気モーメント、磁気異方性エネルギーおよび交換相互作用エネルギーを、密度汎関数法に基づく電子状態の第一原理計算から明らかにする。 2.希土類金属間化合物と他の磁性体の界面における磁気構造と交換相互作用を第一原理計算から調べ、ナノコンポジット磁性体の磁気特性を明らかにする。 ここでは希土類金属間化合物の代表例であるR_2Fe_<14>B(R=Y)を取り上げ、局所密度汎関数法)に基づく電子状態の第一原理計算から、バルク状態での磁気モーメントとモーメント間の交換相互作用エネルギーおよび結晶磁気異方性に関する評価を行い、実測値との比較を行った。 その結果、単位胞あたりの全磁気モーメント(30.22μ_B)はY_2Fe_<14>Bの実測値(30.5μ_B)と良い一致を示し、計算の妥当性を表している。NdイオンのモーメントM_<Sm> (=g_JJ)=8/11・9/2=36/11μ_B〜3.2μ_Bを上で求めたY_2Fe_<14>Bのモーメントに加えると、Nd_2Fe_<14>B全磁気モーメントは約36.7μ_Bとなり、実測値^<6)>(300K)37.7μ_Bとよい一致を示すことがわかった。 また、各原子の軌道を占める電子数の評価から、Y_2Fe_<14>BのY価電子は4f,4gサイトのいずれもc軸方向に伸び、これによってA_2^Oが正となることがわかった。これによって、R_2Fe_<14>Bではα_J<0であるNdが一軸異方性を示すRイオンとなることが示された。一方、YCo_5の価電子数の評価も行い、RCo_5の場合、確かにα_J>0のR=Smにおいて一軸異方性が得られることも確認された。これら結果は、R_2Fe_<14>BとRCo_5のいずれの磁気異方性も4f電子を取り囲む価電子雲の扁平率によって説明することが可能であることを示唆している。
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