研究概要 |
本研究では、ナノスケールで制御された希土類系磁性体の結晶粒間の磁気的相互作用を微視的立場から定量的に把握するため、以下の項目を研究目的とする。 1.種々の希土類金属間化合物のバルク状態での磁気モーメント、磁気異方性エネルギーおよび交換相互作用エネルギーを、密度汎関数法に基づく電子状態の第一原理計算から明らかにする。 2.希土類金属間化合物と他の磁性体の界面における磁気構造と交換相互作用を第一原理計算から調べ、ナノコンポジット磁性体の磁気特性を明らかにする。 ここでは、局所スピン密度汎関数法に基づく電子状態の第一原理計算から、Nd_2Fe_<14>X(X=B,C,N,O)のバルク状態およびbcc-Feとの積層構造における磁気特性を評価し、以下の結果を得た。 1)Nd_2Fe_<14>X(X=B,C,N,O)の磁気モーメントは、ほぼXの原子番号の増加とともに大きくなることが示された。特に、X=OにおけるOの磁気モーメントはFeと平行になるという特異的な結果が得られた。2)Feモーメント間の交換相互作用Jijの値はほぼ15meV前後の値であり、同一c面内にあるFe原子間のJijは20meV前後になっていることがわかった。3)結晶場パラメータA^0_2に、Nd自身の価電子雲(5d,6s)の寄与を考慮することでA^0_2は正となり、Nd_2Fe_<14>Bの磁化容易軸方向がc軸であるという実験事実と整合する結果が得られた。但し、本計算の近似の範囲では、A^0_2は実測値の2〜3倍程度の値を示しており、今後の検討課題として残された。4)α-Feの(110)面とNd_2Fe_<14>Bの(100)面を接合した積層構造において、接合の面間距離が1.9Å以下では磁化が反平行結合とになる可能性があることが示された。
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