研究概要 |
特定領域研究の初年度となる本年度において、(1)希土類系高温超伝導体の組織制御と臨界電流特性の関係、層状コバルト酸化物熱電変換材料の熱電特性・配向性に与える希土類元素置換の効果、の解明を目的に研究を開始した。 (1)については、酸素アニール(キャリア量制御)の容易なErBa2Cu3Oy(Er123)を対象に溶融凝固体の臨界電流特性の向上を目指すため、PtやCeO2添加による母相および常伝導析出物(Er211)の組織の制御を行った。その結果、Er211の初期粒径を下げることでPt添加による析出物の粒径低減効果は薄まるが、CeO2との共添加により粒径低減効果は大きくなることがわかった。しかし、CeO2の添加量により超伝導転移温度は低下することから、適度な量のCeO2とPtの共添加がβr123溶融凝固体の臨界電流特性の向上に著しい効果を示すことがわかった。また、酸素アニールの容易なEr123系での研究により、溶融凝固体のc軸方向の結晶成長部分が特に超伝導性・臨界電流特性に優れることが明らかとなった。 (2)については、Ca3Co409(Ca349)相のRE添加効果およびBi2Sr2Co2Oy(BiSr222)相の磁化容易軸制御を行った。熱電変換材料における課題は、多結晶材における機能性向上である。それゆえ、c軸磁化容易軸をもつCa349は磁場配向に適し、RE添加によって熱電特性の向上と配向化磁場の低減を狙える。さまざまなREを添加したCa349焼結体を作製した。これまでの報告よりも高い置換量で固溶できることがわかった。RE=Y,Sm,Tb,HoのときCaサイトの約25%を置換することが可能である。RE添加により、熱伝導率の低減効果が顕著であり、焼結体試料で実用レベルの約5ぶんの1まで向上した。磁気異方性については、RE=Tbで添加量とともに強まる傾向を示した。
|