研究概要 |
本プロジェクト2年目にあたる本年度では、以下の3つのテーマに取り組んだ。(1)RE123高温超伝導溶融凝固バルクの高性能化(2)希土類添加によるBi系層状熱電酸化物の磁気異方性制御(3)La327系層状マンガン酸化物の磁気状態の制御 (1)については、溶融凝固に過程における2つの結晶成長ドメイン(a軸およびc軸成長)に着目しその臨界電流特性の比較を酸素量制御を精密に行ったうえで行った。その結果、c軸成長のドメインが高い臨界電流密度を示し、結晶学的な評価からも同様な結果を得た。結晶成長時の過冷度の違いが上記の差を生み出すことがわかった。また、これを踏まえ、大きなc軸成長領域を含む円柱状溶融凝固バルクの作製にも成功した。 (2)については、磁場配向用Bi系熱電酸化物の創製を目的にc軸方向に磁化容易軸をもつ物質開発を行った。a軸方向に磁化容易軸もつBi2Sr2Co2Oyは、Ca添加によりc軸方向に転換することがわかった。さらに、Pr, Nd, Tb, Dyの希土類元素のみ、添加によりc軸磁気異方性が増強される。結晶構造解析から固溶によるブロック層の伸縮がCoO2層の歪んだ局所構造に大きな影響を与え磁気異方性が変化することがわかった。また希土類添加では配位子場によりブロック層に磁気異方性を導入していると考えている。 (3)については、これまで酸素量の問題を考慮されてなかったLa327系マンガン酸化物の磁気特性について、酸素量制御による変化を明らかにした。La1.4Sr1.6Mn20yは酸素欠損および過剰酸素を導入できることがわかり、いわゆるas-grown単結晶では酸素不足状態にある。これを酸素を導入していくとMnO2面方向の磁化が飛躍的に上昇した。構造解析からヤン-テラー歪みが酸素量制御によって制御できることがわかった。CMR効果にも影響を与える可能性があり、酸素量制御の重要性が示唆された。
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