多様な用途にある希土類蛍光体の多くは固相フラックス法で合成されるため、その一次粒子は数ミクロンオーダと画一的な粗粒子であり、加えて1ミクロン以下の微粒子では輝度の低下が著しく実用に供することができない。そこで本研究ではパノスコピック形態制御(ナノレベルからメソ及びマクロレベルまでの階層的形態制御)を可能にする溶液錯体化学法(錯体均一沈殿法および錯体重合法)をY_2O_2S:Eu及びYVO_4:Eu系蛍光体の微粒子合成に適用し、粒径数ミクロンの市販標準品と同等以上の高機能を有する試料を得ることを目的とした。平成16年度に得られた研究成果は以下の通りである。 1.錯体均一沈殿法によるY_2O_2S:Eu蛍光体の合成と評価 尿素の加水分解に基づく均一沈殿法で使用する溶媒である水にグリコール類を錯形成剤として添加することにより、形状および粒径が高度に制御されたY_2O_2S:Eu系高輝度微小粒径蛍光体が作製できることが明らかになった。錯体均一沈殿法で合成したY_2O_2S:Eu蛍光体の平均粒径は100-300nmと小さく、特筆すべきことに粒径200-300nmの領域で市販高輝度蛍光体の相対輝度を上回る蛍光体が得られた。 2.錯体重合法によるYVO_4:Eu蛍光体の合成と評価 クエン酸とエチレングリコールとの間のポリエステル反応を基礎とする錯体重合法を用い、1000℃〜1200℃でYVO_4:Eu蛍光体の単相での合成に成功した。固相法で合成した試料と比べて相対輝度は2倍以上となり、また錯体重合法で合成した試料の粒径は約1ミクロンと市販高輝度蛍光体の1/6と小さいにもかかわらず、市販品の相対輝度を上回る蛍光体が得られた。
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