多彩なアプリケーションのある希土類系蛍光体の多くは、高温固相法やフラックスを用いた部分融解法で合成されるので、その一次粒子は数ミクロン以上にまで及ぶ。一方で1ミクロン以下の微粒子では輝度の著しい低下を招き、微細でかつ高輝度の蛍光体を得ることは困難な課題とされている。そこで本研究では溶液錯体化学法を展開し、従来の粗大粒子と同等以上の高輝度を有する希土類系サブミクロン微粒子蛍光体を合成することを目的とした。平成17年度に得られた研究成果は以下の通りである。 1.PVA法による水溶液からの高輝度赤色蛍光体YNbO_4:Eu^<3+>の合成 Nb-グリコール酸水溶液を基本溶液とし、YとEuの原料をポリビニルアルコール(PVA)と共に溶解させ、その溶液を加熱濃縮して得られる高分子ゲル状物質を熱分解して生じる前駆体を1300℃で熱処理することにより高輝度赤色蛍光体YNbO_4:Eu^<3+>を得た。またLiとTbを共ドープすることにより、実用化されているYVO_4:Eu^<3+>よりも高輝度な蛍光体を得ることに成功した。 2.マイクロゲル噴霧凍結乾燥法によるY_2O_3:Eu^<3+>蛍光体の合成:ユニークな形態誘導 PVA、ゼラチン、寒天を含むY及びEu酢酸水溶液を液体窒素中に噴霧して得られるマイクロゲル状の微小球形粒子を凍結乾燥し、これを1300℃で熱処理して蛍光体化した。PVAでは直径約20μmの球状粒子が得られ、微細組織は約200nm程度の粒子から構成され、ゼラチンの場合は球状の粒子は逆オパール状の組織を有し、また寒天の場合の球状粒子は微細な網目構造の組織を有することが明らかになった。 3.錯体重合法による新規希土類蛍光体の探索 錯体重合法により希土類チタンタンタル酸塩の多くが緑白色蛍光体であることが明らかにされ、またEuをドープすることにより高輝度赤色蛍光体になることが明らかにされた。
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