平成19年度は、(1)水・アルコール混合溶媒を用いたソルボサーマル法による形態の制御された蛍光体微粒子の合成に成功し、(2)錯体重合法を用いたパラレル合成による新規蛍光体の探索手法を確立し、(3)硫化物系蛍光体合成ルートの開発に基づき、新たな白色LED用新規蛍光体を発見することができた。具体的な研究成果は以下の通りである。 (1)臨界温度の異なる水とアルコールを混合溶媒とするソルボサーマル法により、特に水の分率の低い領域において、アルコール単体で超臨界を示し、水単独では超臨界でない温度でのソルボサーマル処理をすることにより、粒径の小さい分散性に優れた蛍光体微粒子の合成に成功し、また処理温度を可変することによりウィスカー状粒子や板状粒子など形態制御が可能なことが明らかになった。通常の溶液法では、分散性に優れる微粒子を得ることは容易ではないので、本研究成果は意義がある。 (2)候補蛍光体の組成のライブラリーを作成し、対応する組成に応じた溶液系を試験管アレイに準備し、同時に錯体重合プロセスを施すことにより、多数の蛍光体を同時に並列的に合成し、蛍光体として利用可能な組成のスクリーニングをする、という錯体重合パラレル合成法を開発した。この手法により、ツリウム賦活カルシウムガレート新規蛍光体を発見した。信頼性の高い新物質探索手法として画期的であり、関連分野へのインパクトが大きい成果である。 (3)ユーロピウム賦活バリウムアルミニウム硫化物系蛍光体を錯体重合法と石英ガラスアンプル封入法とを組み合わせることにより、極めて高品質な蛍光体を合成できることを明らかにした。この方法は汎用性が高く、硫化物を扱う研究分野において極めて意義の高い成果である。白色LED用蛍光体としては、希土類賦活バリウム亜鉛硫化物およびストロンチウム亜鉛硫化物が、青色励起によりそれぞれ深赤色および黄色の発光を呈することが初めて明らかにされた。
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