研究概要 |
大容量光ファイバ通信におけるエルビウム(Er)ドープ光増幅器は、信号光強度を千倍一万倍に増幅することができるため、波長分割多重技術との融合により、今日の通信情報量の高速大容量化を可能とした、革新的なデバイスである。通常のガラス中のErイオンの増幅波長帯域は、1.53〜1.56μmであり、更なる通信の広帯域化には、伝送用光ファイバの損失がある程度低い波長で動作する増幅器材料の開発が必要である。本年度は、1.46μm帯で光増幅可能なTm3+ドープテルライトガラスファイバの作成と光物性評価、1.65μm帯でのEr:YAG析出結晶材料の作成、1.52〜1.61μmの広い波長範囲で光増幅可能なBi-EDFにおけるOH含有量と光増幅特性の関連の調査などを行った。Tmドープテルライトガラスでシングルモードファイバの作成に成功した。作成した光ファイバに合はカプラーを接続し、励起光と信号光を導入し、光増幅特性の評価を行ったが、正の利得を得ることはできなかった。ファイバの損失が十分低減かできなかったこと、プリフォーム作成のためのガラス溶融時に完全に脱OHができていなかったことが原因であると推論された。Er:YAG結晶の発光スペクトルの広帯地域化を図るために、YサイトにCa,AlサイトにSiを置換した固溶体の作成を行った。その結果、Erの発光は不均一拡がりにより線幅が広がることが確認された。またAlの八面体サイトの1/2をScに置換することによっても広帯域化が実現できることを明らかにした。Bi-EDF材料については、ガラス溶融時に工夫を行うことにより、OH含有量を低減化でき、それが増幅利得の大幅な改善につながることを実験的に実証した。以上、本年度は、次世代大容量光増幅器デバイスのための、Tmドープ酸化物材料の作成と光増幅特性評価、Uバンド用Erドープの新しい固溶体結晶材料の設計を行い、その精密な光物性評価を行った。
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