研究概要 |
超軟磁性・超磁歪材料開発に繋げることを目的として,マイクロマグネティクス理論に基づき磁歪と結晶磁気異方性の関係を解析した結果,磁歪の小さな領域では磁歪は軟磁性を悪化させるが,磁歪がある一定以上大きくなることにより,軟磁性を改善する方向に磁歪が働くことが確認され,昨年度に見いだされた保磁力急減現象は巨大磁歪材料においてのみ確認される現象であることが見いだされた。さらに,その発現機構に検討を加え,軟磁性の改善が,磁歪により各結晶粒の磁化の向きが同一方向に揃うことに起因することを明らかにした。 Nd-Fe-B厚膜磁石については,新規に遮断成膜法(IDM : Interruptive Deposition Method)を開発し,Nd-Fe-B系異方性厚膜磁石の磁気特性を改善した。IDMでは,レーザ遮断時間を増すことにより,配向度を損なうことなく,作製膜の保磁力を増加させることができた。従来の連続成膜法(CDM : Continuous Deposition Method)とIDMで作製した同程度の膜厚を有する厚膜の(BH)_<max>値を比較すると,IDMの採用により,膜厚20及び90μm厚の膜に対して,それぞれ,60及び80%程度の(BH)_<max>値の改善が達成された。さらに,従来のCDMでは,我々が目標とする100kJ/m^3を超える(BH)_<max>値が達成されなかったのに対して,IDMでは膜厚20μmまでの膜において,目標の(BH)_<max>値が達成された。 積層型硬・軟複合厚膜については,Nbの添加により,(BH)_<max>値を損なうことなく,保磁力と減磁曲線の角形性を改善できた。また,100μm厚までの厚膜化を達成したが,厚膜化により,減磁曲線が2段化する傾向が観察され,更なる厚膜化を進めるには,硬・軟磁性層の作製条件に検討を加える必要があることが示唆された。
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