研究概要 |
(A)PLD法を利用したNd-Fe-B系厚膜磁石においても,Zr,Nb,Gaの微量添加は,磁気特性の改善に有効である。さらに,添加物入りの厚膜をPA法で結晶化すれば,更なる特性改善が実現される。特にGaを添加した試料ではその効果が顕著であり,Nd_<2.6>Fe_<14>B+Ga_<0.5at.%>ターゲットから作作製した厚膜では,1700 kA/m程度の著しく高い保磁力が得られた。 (B)化学量論組成であるNd_<2.0>Fe_<14>B組成のターゲットを用い作製した試料にPA法を施した際,Zr,Nb,Gaを各々添加することにより,無添加ターゲットを用い作製した試料に見られる保磁力の低下が抑制された。結果的にZr,Nbを添加した試料では,無添加の試料の(BH)_<max>値を上回る約70 kJ/m_3が得られた。 (C)Gaの添加は,異方性厚膜磁石の特性改善にも有効であり,基板を加熱した状態で長時間成膜を行った際に起こる保磁力の減少と配向の低下を抑制することができた。これを利用して,保磁力=1160 kA/m,残留磁化=1.00T,(BH)_<max>=183 kJ/m_3の厚膜磁石を作製することができた。 (D)超多周期積層型ナノコンポジット厚膜磁石の軟磁性層としてα-Feを用いることに成功した。これにより(BH)_<max>値が90 kJ/m_3を超える等方性厚膜磁石を作製することができた。 (E)厚膜磁石に存在するドロップレット抑制するために,基板-ターゲット間を飛行するドロップレットを再アブレーションするための補助レーザを有する,PLD装置を開発した。開発装置の補助レーザの遅延時間を調整することにより,成膜速度の大幅な減少を伴うことなく,ドロップレット数を抑制することができた。さらに,成膜途中でアブレーションを中断しターゲットを冷却した場合にも,通常の成膜(1時間連続成膜)に比べてドロップレットの減少が認められた。
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