研究概要 |
特定領域研究の一年目では、希土類含有層状酸化物を我々がこれまで開発した静電自己組織的析出(ESD)法によるて作製することを試みた。次に、そのようにして作製した希上類含有層状酸化物の発光特性を評価した。 はじめにチタンやニオブのナノシートを作製し、それらが分散している溶液に一般的な希土類イオンを含む水溶液を加えた。その結果、適当なPHのもとで、希土類イオンがインターカレートした層状酸化物が析出した。得られた層状酸化物のキャラクタリゼーションをXRD, XPS, ICP, UVスペクトル測定で行った。その結果、希土類イオンは水和した状態で層間にインターカレートしていることが判明した。これを熱処理すると、層状構造を保ったまま水和した水分子が層間から失われていくことが判明した。また、ナノシートと希土類イオンを交互に静電相互作用によって積層していくLayer by Layer法により積層膜作製を試みた。その結果、10層程度まではきちんとした積層膜が形成することが判明した。 次に、上記の方法で作製した層状酸化物膜の発光特性を測定した。ユーロピウムを含有する層状酸化物は、紫外光励起により614nmに強い発光を示した。励起スペクトルからホスト層のバンドギャップ励起からユーロピウムへのエネルギー移動に基づくことが判明した。さらに、熱処理することで発光強度が減少することも見いだした。これらの結果は、層間の水分子の存在が発光を促進していることに基づくと推定された。そこで、湿度の違う環境で発光強度を測定すると、乾燥状態では発光強度が極端に減少することが分かった。このような異常な発光現象は、層間に存在する水分子が氷に似た水素結合しており、このことがその中に存在するユーロピウムに電子やホールの移動を促進するためと考えられた。実際、ラマンスペクトルから層間水分子は氷に近い水素結合していることが判明した。
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