研究課題
本年度の成果は二つに分けることができる。第一の成果は、水和希土類イオンを含有させたチタン層状酸化物の発光強度が励起照射時間とともに減少し、その励起スペクトルが変化することである。励起光照射にともなって層間距離は変動しないことから、励起時間にともなう発光強度の減少は層間水の光分解によるものではない。また、励起単色光を照射し続けると、照射した単色光に相当するスペクトルが減少した。これらの現象は、励起した光によりホスト層から水和水へエネルギー移動が生じるが、水和水の結合状態やその対象性が各波長の光に応じてそれぞれの異なった結合状態になることによるもので、結局それが励起スペクトルの変化や発光強度の減少をもたらすのであると結論づけられる。もう一つの成果は、層間の希土類イオンの種類により、発光強度がホスト層の種類に依存することを見出した事である。ユーロピウムの場合には、ホスト層に金属欠陥のあるチタン酸化物の場合が最も高い発光を示した。このことは、ユーロピウムの場合、ホスト層の欠陥準位がエネルギー移動を促進していることを意味している。一方、テルビウムの場合には、逆にホスト層に欠陥があると発光は著しく減少する。このことは、この欠陥が再結合中心として働き、テルビウムへのエネルギー移動を抑制していることを意味している。これらの測定結果をもとに、layer by layer法により、ユーロピウム/チタン酸化物ホスト層(欠陥)/ニオビウム酸化物ホスト層/テルビウムからなる複合積層膜を形成し、一つの基板で同時に赤と緑の発光を出せる素子を開発した。これらの成功は、もう一つ青を発光する物質を層間に入れることにより、全色発光可能な素子開発につながるものである。
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Journal of Physical Chemistry B Vol.110, No.10
ページ: 4645-4650
Journal of Solid State Chemistry Vol.179, No.1
ページ: 33-40
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