研究課題/領域番号 |
16080216
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
舘脇 洋 名古屋市立大学, 大学院・システム自然科学研究科, 教授 (20002115)
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研究分担者 |
三好 永作 九州大学, 大学院・総合理工学研究院, 教授 (70148914)
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キーワード | He isoelecronic sequence / 4 component relativistic theory / Correlation energy / Hyllerass / Gaussian / Variation collapse / Prolapse / Dirac-Fock |
研究概要 |
今年度は主に、1)Heと同電子を持つイオン系の電子相関についての研究と2)変分崩壊のない4成分相対論Gauss型基底についての研究を行ったので以下に詳述する。 1)Heと等電子を持つイオン系の電子相関について 従来、非相対論的方法でHeと等電子を持つイオン系の電子相関を計算するとHeでは-42 millihartree、Cより大きい原子イオンではおよそ-45 millihartreeと一定となる。ところがPestkaとKarwowskiが行った相対論Hylleraas型の関数を用いた配置間相互作用(CI)計算によると、Heでは-42 millihartree、Caでは-46 millihartreeと極小値を取りErで-45 millihartreeと極大値を取るが、以下急激に減少し原子番号118の原子では-67 millihartreeに達する。PestkaとKarwowskiはHylleraas型の関数では2体系に関するkinetic balanceが満たされていないがこのことが、大きな電子相関を与える原因となっている可能性を示唆した。そこで少なくとも使用するspinorに関してはkinetic balanceを満足し変分崩壊を起こさないMulti-reference Dirc-Fock(MCDF)法を使用しこの系の電子相関エネルギーを求めることとした。使用した電子配置は(1s)^2、(2s)^2、(2p)^2、(3d)^2である。MCDF法はPestkaとKarwowskiはHylleraas型によるCI計算の結果をほぼ再現した。ただしMCDFの結果はHylleraas型と異なり極大値を持たず単調に減少する。さらにMCDFによる電子相関エネルギーはBkでHylleraas型CIのそれを上回る。以上の結果はPhys. Rev. A70 024501に発表。さらに2成分相対論計算は変分崩壊を起こす基になる陽電子系を含まないのでこれを用い、33個のs、28個のp、28個のd、28個のf型Gauss関数を使用したCI計算を行った。計算された電子相関エネルギーは原子番号が大きなイオンで3-4倍上回るが、Hylleraas型CIのそれと定性的に一致する。結果はChem. Physi. Lett. 399 480に発表。 2)変分崩壊のない4成分相対論Gauss型基底について 4成分相対論計算では展開法を使用すると異常に低い全エネルギーが得られることがあることが知られている。これは変分崩壊と呼ばれる。近年かなり大きな基底関数をしてもnumerical DF値を下回る全エネルギーが得られることが分かってきた。これをprolapseと呼ぶ。指数因子を変分し全エネルギー値を最小にする計算をおこなうと必ずprolapseが生ずる。展開個数が増えるとともに全系のエネルギーがnumerical Dirac-Fock値を再現するように指数因子を決定する方法でprolapseのない4成分相対論Gauss型基底を決定した。J. Chem. Phys. 121 4528に発表。
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