研究概要 |
1)今年遂行された4成分相対論の研究は (1)kinetic balanceを施したDirac方程式の研究(論文1)、 (2)変分崩壊の無い4成分基底関数の研究、実用に足る高精度の相対論基底の研究(論文2,3)、 (3)GdFの電子状態の理論的研究(論文4)、 (4)Mn_2分子の基底状態における相対論的効果の影響(論文5)、である。 (1)ではkinetic balanceを施したDirac方程式が非相対論的極限でSchrodinger方程式に還元されることを見いだし、この方程式が精度の高い相対論スピノールを与えることを示した。(2)では_<SO>Hgから_<103>Lrまでの原子に変分崩壊の無い4成分基底関数が、さらに_1Hより_<103>Lrまでの原子に高精度の実用性の高い基底が与えられた。(3)は非経験的4成分相対論を用いてランタタニドを含む分子系のスペクトルの解析を世界で始めて行った研究である。問題としたスペクトルの解析にも成功している。(4)ではDouglas-Krollの方法を用いて、Mn_2分子の場合に相対論が化学結合に及ぼす影響を論じた。 2)今年遂行されたモデル内殻ポテンシャル(MP)による2成分相対論の研究は (1)ランタニド元素についてのMP下での電子相関を記述する基底関数の開発とその応用、 (2)MPを大規模系の計算が可能なプログラムシステムABINIT-MPへの組み込み、 (3)MPのエネルギー勾配計算のコードの開発とプログラムシステムGAMESS, ABINIT-MPへの組み込み、 (4)機能分子トライポードとランタニドイオンの相互作用に関する理論研究、である. (1)についてはコンパクトな基底関数系が作成され,それを使ったCeO分子の計算では,実験による分光定数をよく再現し,相対論効果と電子相関を効率的に記述するものであることが明らかとなった.また.(2),(3)については,(3)のABINIT-MPへの組み込みを除いてほぼ完了し,応用計算が進行中である.さらに(4)については築部グループの実測データを説明する理論計算の結果を得ることが出来た.
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