希土類錯体は、ダイナミックな電子構造や多様な配位化学を有するため、これらに基づいた興味ある分子機能を発現できる。本特定領域研究では、分子認識機能とセンシング機能とを合わせもつ超分子希土類錯体発光系の開発を目指して、従来にない高組織化配位子を導入した希土類錯体系の合成とナノスケール化を図り、超分子組織制御と新機能設計のための開発指針を確立するとともに、希土類発光を活用したセンシング材料となる新規機能物質創製の基盤を築くことを目的とした。 本年度は特に、特徴ある基質配位空間を与えるテーラーメイド希土類錯体やデンドリマ-希土類錯体、自己集積化希土類錯体などの『高組織化希土類錯体』を新たに創製して、分子認識機能と希土類発光機能との複合化への新たな方法論の確立を図り、以下の成果を得た。 (1)β-ジケトナート配位子を含む発光性ユウロピウム錯体の構造最適化と、水溶液に溶存するフッ化物イオンのビジュアル・センシング系の構築。 (2)キラリティーを導入した混合ドナー型トリポード配位子を含む希土類錯体の開発。 (3)多彩なアニオン認識選択性を示す希土類錯体を活用したビジュアルセンシング系の創製。 (4)複数の希土類錯体形成サイトを有するデンドリマー配位子の合成。 (5)近赤外発光センシングへの適用可能な希土類錯体の検索。 (6)両親媒性サイクレン配位子を含む希土類錯体の調製と水中での自己集積体の構築。 以上を通じて、発光性希土類錯体のナノスケール化と光センシング機能の賦与に成功を収めた。
|