希土類錯体は、ダイナミックな電子構造や多様な配位化学に基づいた興味ある分子認識機能や光センシング機能を発現できる。本研究では、特徴あるナノ配位空間を与えるテーラーメイド希土類錯体やデンドリマー希土類錯体、タンパク希土類錯体複合体などの『高組織化希土類錯体』の創製と、ナノスケールでの組織制御法の確立を図るとともに、分子認識機能と希土類発光特性の高次化とビジュアル・センシング機能化を図る。 本年度は、トリス(ジケトナート)ユウロピウム(III)錯体の構造最適化を図り、フッ化物イオンを捕捉して特徴的な赤色発光を与える希土類錯体センシング系の構築に成功を収めた。特に、ppmオーダーで水中に溶存するフッ化物イオンの裸眼検出法の確立などビジュアル・センシング材料化を行った。また、本研究グループが独自に開発したトリポード配位子をナノサイズ化したデンドリマー型配位子を合成して、ナノスケールをもつ発光性希土類錯体を系統的に調製するとともに、デンドリマー・イッテルビウム錯体がチオシアン酸アニオン選択的な近赤外光センシング機能を発揮することを見い出した。さらに、希土類錯体化学を活用したタンパク分子の高感度・高選択的な検出法や、タンパク間相互作用のビジュアルセンシングを可能とする組織化法などの基盤技術の確立を図った。
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