本領域は、ヒッグス粒子と超対称性の物理を基軸として、関連する実験と理論を包括するものである。建設中のCERNのLHC加速器は、2008年秋にビームが周回したものの、超電導磁石の事故で1年間修理の為に運転が中止となった。ATLAS実験は測定器の建設と設置が終了し、エレクトロニクスなどの搭載を行ないビーム衝突に備えていた。物理解析の準備も活発に行なわれている。特に本領域が主導するミューオントリガー用チェンバーの組み立てと設置が終り、シリコン飛跡検出器の搭載も終了した。東京大学素粒子物理国際研究センターに整備された物理解析地域センターを軸にして、物理の解析の準備も行なっている。特に、ヒッグス粒子に関しては重要な生成・崩壊モードの探索可能性に関して研究が進み、超対称性発見のためのバックグラウンドの研究も進み、国際会議などで成果が報告されている。CERNには本領域から約10名が常駐して測定器の運転・保守と物理解析の準備を行なっている。一方、MEG実験も進み、遅れていたイタリアが担当している液体キセノンγ線測定器の冷凍容器の建設も、本領域の研究者の貢献もあって完成し、平成19年の終わりの予備実験に加えて、長期データ取得を行なった。平成20年度のデータは、μ→eγの崩壊分岐率の世界一の上限に匹敵するものである。現地PSIには、数名が常駐して研究を行なっている。また、関連する素粒子理論や素粒子現象論の研究も、本領域の資金を有効に使ってポスドクを雇うなどして進んでいる。更に、関連する国際リニアコライダーILCでの実験の準備として、測定器開発、ILC物理の検討も行なってきた。
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