本領域は、ヒッグス粒子と超対称性の物理を基軸として、関連する実験と理論を包括するものである。CERNのLHC加速器は、平成20年秋にビームが周回したものの、超電導磁石の事故で1年間修理の為に運転が中止となった。ATLAS実験は測定器の建設と設置が終了し、エレクトロニクスなどの搭載も終了した。平成21年暮れにはLHCは再度稼動を始め、平成22年3月には7TeVの衝突エネルギーでビームの衝突を始め、ルミノシティーも2x10^<32>cm^<-2>s^<-1>まで上がっている。物理解析も活発に行なわれている。特に本領域が主導するミューオントリガー用チェンバーやシリコン飛跡検出器は順調に稼動しており、これらの性能も十分に出ている。東京大学素粒子物理国際研究センターに整備された物理解析地域センターを軸にして、国内でも物理の解析を行なっている。特に、ヒッグス粒子に関しては重要な生成・崩壊モードの探索可能性に関して研究が進み、超対称性発見のためのバックグラウンドの研究も進み、国際会議などで成果が報告されている。CERNには本領域から約10名が常駐して測定器の運転・保守と物理解析を行なっている。ATLAS実験は既に数編の論文を発表している。一方、MEG実験も進み、平成19年の終わりに予備実験を行い、平成20年度と21年度に長期データ取得を行なった。平成21年度のデータは、μ→eγの崩壊分岐率の世界一の上限に匹敵するものであり既に論文として発表している。現地PSIには、数名が常駐して研究を行なっており、本領域が実験全般を主導している。また、関連する素粒子理論や素粒子現象論の研究も、本領域の資金を有効に使ってポスドクを雇うなどして進んでいる。更に、関連する国際リニアコライダーILCでの実験の準備として、測定器開発、ILC物理の検討も行なってきた。
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